スクリーンリーダーを使った初めてのReaper・その6 エフェクトを準備して録音

なかなか録音が始まりませんでしたが、ようやくここまでたどり着きました。 録音の手順は、前にやったのとだいたい同じですが、今回は、楽器の音を、ヘッドホンで聞きながら録音します。

VSTエフェクトは前回はリバーブだけでしたが、アンプシミュレーターや、ディレイなど他にもいろいろ使ってみます。

リバーブは、エフェクトのトラックを作って、そこに他のトラックから送る方法でかけてみます。

録音の前に、トラックを作って、先にVSTエフェクトの準備をしてしまいましょう。

必要なVSTは録音する楽器などによって違います。生楽器やボーカルならば、リバーブがあればとりあえず始められそうですね。他には、イコライザーや、コンプレッサーでしょうか。エフェクトがあまり必要ない人は、サクサクっと流し読んでください。

エレキギターでハードウェアのアンプシミュレータを使う場合は、そちらにノイズゲートやいろいろなエフェクトが付いているので、そちらを使えば、VSTのエフェクトはほとんど使わなくても出来ます。 今回はそうでないので、使うVSTは以下の物です。

・ノイズゲート。
Reaper付属のReaGateというVSTが使えます。これは無くても録音できますが、エレキギターはノイズを拾いやすい楽器なので、ノイズゲートはあったほうがいいでしょう。
プリセットでエレキギターを選んで、パラメータは、スレッショルドの値を調節するだけで使えます。 スレッショルドの値が大きすぎると、小さな音や余韻の部分がノイズと一緒に聞こえなくなってしまいます。ノイズが消える範囲で、スレッショルドを小さめの値にするといいです。

・アンプシミュレーター
これは、ネットからダウンロードして使います。 いろいろな物がありますが、今回は使い方が簡単なSimulAnalog Guitar Suiteを、ここからダウンロードします。

SimulAnalog Guitar Suite

この中には、2種類のギターアンプと、いくつかのコンパクトエフェクターが入っています。 プリセットはありませんが、実際のギターアンプを使ったことのある人なら、パラメーターは直感的に理解できると思います。

他には、コーラスと、ディレイと、リバーブを使います。 これらはReaper付属の物にします。 コーラスとディレイは、JSにいくつかありますし、ディレイはVSTのReaDelayもあります。

今回使ったのは、
JS: Chorus
JS: Delay
というものです。

JSの探し方が分からなければ、この連載のその3の最後のほうで、JSについて書いてあるのを読み直してください。

リバーブは、前回と同じReaverbeを使います。

まずはこのくらいで、

VSTのインストール方法

インターネットでダウンロードできるVSTですが、インストーラーが付属するものと、しないもので、インストール方法が違います。 中には、NVDAだけではインストール出来ないものや、インストールしてもNVDAでは使えないものもあります。そういうものはすっぱりあきらめて、使えるのを使います。

インストールで大事なのは、VSTのファイルの置き場所を間違えないことです。

Reaperで、Ctrl+Pを押して、設定で、VSTという項目を探し、その中の、
「VST プラグインパス (セミコロン区切りで複数のパスを指定できます):」
という項目を見てください。
C:\Program Files (x86)\Steinberg\VstPlugins;C:\Program Files (x86)\XXXXXX
とかなんとか書いてあると思います。 ここに書かれているフォルダの中にVSTを置きます。 インストーラーが無いものは、VSTの本体(拡張子は.dll)を、そこにコピーします。インストーラーがあれば、VSTのインストール先を、そのフォルダにします。 VSTが増えてくると、フォルダがごちゃごちゃしてくるので、フォルダごとVSTをコピーしたり、サブフォルダを作って整理しておくといいです。VSTの説明書とかも、VST本体と同じフォルダにコピーして問題ありません。

VSTのインストールをしてからReaperを立ち上げれば、以前にReaverbeでやったのと同じ方法で、新しいVSTを使うことが出来ます。
トラックを作って
VSTをいくつか刺して、
インプットモニタにチェックを付けて、
音を聞きながらエフェクトを調節します。
エフェクトの調節は、プリセットを選ぶ場合は、Fキーを押して、目的のVSTを選んで、0.0%みたいに聞こえるところで選ぶ。
細かいパラメーターをいじる場合は、Pキーを押して、上下キーでVSTを選んでエンターを押してから、パラメーターの数値を変更する。 といった手順です。

録音した後でも、エフェクトのパラメータは変更できるので、あまり細かく音を作りこむ必要はありません。

一つ目のトラックでこの作業をしたら、Fキーを押して、VSTを上下キーで選ぶところで、範囲選択や、コピーや貼り付けが出来ます。 Ctrl+CとかVとかAとか、Windowsではおなじみのキー操作です。 これを使って、一つ目のトラックのVSTを、プリセットやパラメータの設定内容もそのままに、2つ目のトラックにコピーすることもできます。

また、トラックを選んだ状態で、Dキーを押すと、そのトラックを複製できます。

気に入ったエフェクトの組み合わせを、エフェクトチェインとして保存しておけば、それを別の曲を作るときに使うことができます。

「初めてのReaper」という話では無くなってしまいますが、こういう捜査を覚えると、だいぶ楽が出来ます。

そんな風にして、録音するためのトラックをいくつか作っておきます。

今回は、伴奏のギター用のトラックを2つ作り、VSTは、フェンダーアンプと、コーラスと、ディレイを刺しました。
ギターソロ用のトラックも2つ作り、VSTは、マーシャルアンプと、ディレイを刺しました。 聞き苦しいほどのノイズは無かったので、ノイズゲートは使いませんでした。
(VSTは、「指す」という表現をします。日本語として、何となく違和感があるんですけど、これはたぶん「insart」の訳です。)

リバーブのエフェクトをまとめてかける

複数のトラックの音を別のトラックに送って、そのトラックでまとめてリバーブをかける方法を説明します。 この方法は、エフェクトをセンドするとか、センド・リターンエフェクトとか言います。 この作業は、録音の後でやってもいいですけど、説明は先にしておきます。

リバーブのためのトラックを一つ作り、そのトラックにReaverbeを指します。

プリセットで、sweetverboを選び、 パラメーターは、2番目にある「Dry」を最小の、「-inf dB」にします。 最小にするには、下方向きキーでもできますが、ホームキーや、ページダウンキーを使うと早いです。

ドライを最小にしたので、このトラックからは、原音は出ずに、リバーブのかかった音だけが出ます。 こうしておかないと、リバーブの量を変えたときに、原音の音量まで変わってしまいます。

それと、ZLの値を、0から1に変更してください。これをやらないと、オーディオインターフェイスとは関係なく、録音の時に、音がものすごく遅れて聞こえて、リバーブをかけたままでは録音は出来ません。普段、Reaverbeはあまり使っていなくて、こういう使用のリバーブは初めてでしたので、これに気が付くまで、大変悩みました。

パラメータを設定したら、分かりやすいように、このトラックに「Reaverbe」という名前を付けておきます。トラック名を変更するのは、F2キーでしたね。
ここまでのやり方は、以前にReaverbeを使ったときに説明したのと同じですから、分からなければそちらをもう一度読んでください。 それと、この次の作業と合わせて、Reaverbeのトラックの音量を下げて、全体にリバーブが浅めにかかるようにしておいた方がいいかもです。

次に、リバーブをかけたいトラックを一つ選んで、Altを押しながらアプリケーションキーを押します。
上下キーで「センド」を選んで右方向キー、またはエンターを押します。

上下キーで
「トラック&T 5:Reaverbe ト」
のように聞こえるところでエンターを押します。数字のところは、トラック番号です。

これで、そのトラックからReaverbeのトラックへ音が贈られるようになりました。 同じ事を、リバーブをかけたいすべてのトラックで行います。

リバーブのかかる量の調節は、調節したいトラックを選んでから、Iキーを押します。 Tabを何度も押して
センド先 トラック5 "Reaverbe" 削除 (&D) Alt&D
のように聞こえる次の「+0.00」という数字を書き換えて行います。 リバーブを減らしたければマイナスを使って、「-3.00」とか、そのように書きます。

実は、この画面でも、先ほどAltとアプリケーションキーを押して行った、センド先の追加が出来ます。 ですが、ちょっとやりにくくて、慣れないと、不要なセンド先を沢山作ってしまうと思います。(経験者談)

この画面でセンド先を取り消したい場合は、 センド先 トラック4 "Reaverbe" 削除 (&D) Alt&D のように聞こえたところで、Shift+Spaceを押します。 スペースキーは、Reaperでは再生と停止のためのキーなので、ボタンを押すような操作は、シフトを押しながらスペースを押すことで行います。 あるいは、Altとアプリケーションで開いたメニューで、先ほどとは逆に、エンターを押してチェックを外せば、センドを取り消すことが出来ます。

これで、録音の前にやることは全部やったと思います。 ヘッドホンをして、メトロノームをオンにして、それぞれのトラックに何か録音しましょう。 録音のやりかたは、前に書いたのと、ほぼ同じです。 違いは、自分の演奏にエフェクトがかかって、ヘッドホンから聞こえることくらいでしょう。エレキギターの場合、ギターアンプとマイクを使わないので、近所迷惑にならないとか、周囲の雑音を気にする必要が無いとかいうのも、大きなメリットです。

そうして出来たのがこれです。演奏が下手な上に雑なのは、ご容赦ください。

バックステージ2(オーディオインターフェイス使用)

そして、伴奏を足して、ギターの音も変えてみました。

バックステージ2(伴奏付き)

録音はやり直さずに、同じものを使いました。 今回は順序が逆になっていますが、普通は伴奏を準備してから、ソロパートを演奏します。

エフェクトを変えて、伴奏を付けています。

ギターソロは、今度はノイズが目立つようになったので、ノイズゲートを使いました。ReaGateを、ギターアンプの前に刺しています。

ギターソロのアンプヘッドはLePou PluginsというギターアンプヘッドのVSTの中から、ブギーのレクチファイアーをシミュレートしたものを使い、Reaverbeをマーシャルのスピーカーキャビネットとして使いました。 このやり方は、以前に「ギターアンプシミュレーターからIRファイルとReaVerbへたどり着いた話」という題名でバックステージに書いています。

伴奏は、FA3というアンプシミュレーターのVSTを使っています。アンプの後に、イコライザーのVSTを刺し、低域をカットしています。SH-1 Graphic EQという使い慣れたVSTを使いましたが、Reaper付属のVSTやJSでも、効果は同じです。

FA3は、パラメータが多くて、細かく設定するのはやや難しいですが、プリセットが沢山あるので、そこから使いたい音を選んで使うのは簡単です。

コーラスとディレイは、伴奏無しバージョンで使ったのと同じJSを使い、リバーブも同じReaverbeを使いました。

ミックスした後に、リミッターもかけました。使ったのは、George YohngのW1 LimiterというVSTです。

これは、マスタートラックに刺して使います。マスタートラックは、メニューの「表示」から、「マスタートラック」でエンターを押すと、トラックの一番上に表示されます。このトラックに刺したVSTはすべてのトラックの音に効果があります。

インプットレベルの時に説明したピークウォッチャーを使って、マスタートラックのレベルが0dBを超えないように調節して、その後で必要に応じて、リミッターを使って、音圧を上げます。マスタートラックにイコライザを刺して、トーンを微調整することもあります。こういったことがマスタリングという作業の基本です。

ギター以外の楽器はVSTi(VSTインストルメント)です。

ドラムはSuperDrumFX。生ドラムの音が何種類か出せます。スネアやタムは、低域をカットした方が、シャキッとします。

ベースは、Ample Bass P Lite II。使いやすい音なので、よく使っているVSTです。

バスドラむと、ベースには、リバーブをかけないのが基本です。

オルガンは VH-2です。VH-1というVSTと合わせて、いろいろなオルガンの音が出せます。

これらは、ダウンロード先のリンクを張っても英語のページで、使い方も分かりにくいと思います。 気になる人は、VSTの名前で検索すれば、日本語で説明しているブログなどが見つかるので、そういうのを読んで使い方とダウンロード先を調べてください。

「VST リバーブ」などと検索すれば、評判のいいリバーブのVSTなども、きっと見つかります。

アイテムの編集

話を録音に戻します。

録音したトラックで、コントロールを押しながら左右キーを押すと、録音したファイルを選択出来ます。これをアイテムと呼んで、デリートを押せば、そのアイテムが削除出来ることは前に書きました。

同じようにアイテムを選択してから、Ctrl+Xで切り取って、別の場所にCtrl+Vで張り付けることも出来ます。 アイテムを選択してから、左右キーやページアップ・ダウンキーで好きなところまで移動して、Sキーを押すと、そこでアイテムを分割できます。 アイテムを範囲選択して切り取ったり、張り付けたりも、編集メニューから行えます。

これをうまく使うと、演奏を失敗した部分を切り取って、ちゃんとした演奏を張り付けることが出来ます。 範囲を選択して、パンチイン・パンチアウトも出来ますが、上に書いた方法のほうが簡単だと思います。 なお、アイテムの選択は、上下キーを押すと解除されてしまいます。上下キーを押すと、トラックが選択されるからです。

例えば、難しいギターソロを弾く場合、録音用のトラックと、うまく録音出来たアイテムをコピーして張り付けておくトラックを用意します。

そうして、うまく引けたところだけを切り取って、別のトラックに張り付けて行きます。 16小節のソロで、前半8小節だけ弾けたら、それを別トラックへ移動して、残りの8小節を弾いて、うまく弾けたら、前半の8小節を元の場所に戻して16小節のソロを完成させるとか、そんなやり方です。

レンダリング

さて、 「初めてのReaper」という枠からだいぶはみ出してしまいましたが、レコーディングについて、必要なことは一通り書きました。 録音してエフェクトもかけたら、完成した曲を、ファイルメニューの「オーディオファイルにレンダリング」から、ファイルに書き出すことが出来ます。 沢山の項目がありますが、よく分からないものはそのままにしておけばいいです。専門用語みたいなのは、ネットで調べると、たぶん意味が分かります。

ファイル名を決めて、「1 個のファイルをレンダリング」でエンターを押せば、WAV形式のファイルが出来ます。

書き出したファイルは、別のソフトで無音部分をカットしてもいいですし、「レンダリングしたアイテムをプロジェクトに新規トラックとして追加」にチェックを付けると、そのようになるので、 そのトラックを編集して、無音部分をカットして、もう一度レンダリングでファイルに書き出してもいいでしょう。

書き出したファイルが別のプレーヤーソフトで再生できない場合は、レンダリングの時のサンプリングレートを44.1kHzに、ビット数を16ビットにしてみてください。

(2018/5/29追記)

最初から、曲の最初と最後の不要な部分以外だけを書き出すには、次のようにします。

まず、メイン画面で、ページアップ・ページダウンキーなどを使って、書き出したい部分の先頭、例えば3小節目の最初に移動して、そこで [ キーを押します。

次に、書き出したい部分の最後、例えば18小節目の最後に移動して、]キーを押します。

その後で、レンダリングを行います。

レンダリングでは、タブキーで、「範囲」という項目を探します。最初は「プロジェクト全体」になっていると思いますので、これを「時間選択」に変更してからレンダリングを行います。

そうすると、上に書いた例では、3小節目の最初から、18小節目の最後までが書き出されます。

Reaperの2017年7月のバージョンからは、MP3のエンコーダがバンドルされるようになりました。

以前ここに、MP3形式でレンダリングをする方法について書いていましたが、 現在では、特に何もしなくても、レンダリングのさいに、出力形式でmp3を選べば、mp3形式のファイルを書き出すことができます。

また、日本語化パッチがバージョンアップされているため、「オーディオファイルにレンダリング」というメニュー項目は、「音声ファイルにレンダリング」に変わっています。 このような変更は、他にもあると思います。どうしても分からなければ、メールでお問い合わせください。

追記は以上です。 .

次当たり、設定でやっておくと良さそうなことを書こうかなと思っています。

それから、近いうちにReaper関連で役に立つURLなど、いくつか集めて紹介したいと思います。

レコーディングに関しては、ひとまずこれでおしまいです。


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