前回沢山紹介したギター関連のVSTからいくつか選んで、実際に使ってみました。 ここに登場するギター関連のVSTの入手先などは、前回の「無料で使えるギターアンプ、スピーカーキャビネット、ドライブペダルのVST」に書いています。
SforzandやSFZプレーヤーのことも前に書いていますので、今回は、ギターは弾かずに、サウンドフォントを使いました。
作ったのはイントロだけですが、カバー曲なのでYouTubeにアップしました。
Sweet Child O' Mine intoro by free VST
それっぽくしてありますが、完コピではないです。本物は5本のギターを重ねているようですが、省略して3本で作っています。
ギターは自分で弾かずに、ヤマハのパシフィカというギターの、サウンドフォントを使いました。
ギターアンプは、マーシャルのJCM800で、スピーカーキャビネットもマーシャルです。
ここからは、使用したものを、順番に説明して行きます。
今回使ったサウンドフォントは、こちらに紹介されています。以下の2つのページを読んでみてください。
DAWは落ちるもの:バッキングに使えるエレキギターのサウンドフォント「YamahaGtr」紹介
リアルな音を奏でるフリーエレキギターVST音源! - LAMEのDTMブログ
ただし、これらのページに書かれているダウンロード先はリンク切れになっています。 これが、ダウンロード可能な直接のリンクです。すでに消滅したファイルのアーカイブです。
http://web.archive.org/web/20160314023243/http://bandshed.net/sounds/sfz/yamahagtr.zip
正確には、サウンドフォントではなく、SFZファイルですね。このファイルは、普通の音と、ブリッジミュートの音が使えるので、ハードロックのバッキングなどにも向いています。ダウンロード先が不安なので、興味があればとりあえず持っておいて損はないと思います。これに限らず、サウンドフォントや、SFZファイルは、いつダウンロード出来なくなるか分かりません。
サウンドフォントの使い方は、以前に他のページに書きました。この曲に関しては、Sforzandでも、SFZプレーヤーでも、同じように使えます。 ですが、ピッチベンドを使うギターソロには、SFZプレーヤーの方が適しています。 この曲では、ピッチベンドも、ビブラートも、ブリッジミュートも使っていません。
yamaha_sus_mute.sfz というファイルを使いましたが、跡から考えれば、 yamaha_sus.sfz のほうが、この曲には向いていました。
yamaha_sus_mute.sfz は、ベロシティが57以下になると、ブリッジミュートの音になります。そのため、メタルのギターリフなどでは使いやすいのですが、普通の音色だけで強弱をつけようとしても、極端に弱い音は鳴らせません。
ギターアンプのVSTは、前回「無料で使えるギターアンプ、スピーカーキャビネット、ドライブペダルのVST」で紹介した、 Mercuriall AudioのJCM800 Hot Triode modelというアンプヘッドと、 スピーカーキャビネットとして、Red Wire Impulse ResponsesのマーシャルのIRファイルを使っています。
アンプのほうは、ドライブで歪の量を加減します。トーンは多少いじる程度で、イコライジングは、イコライザーのVSTに任せたほうが楽です。 スピーカーキャビネットのIRファイルを変えることでも、トーンは激変します。
スピーカーキャビネットで使用したIRファイルは、中央のギターでは、マイクはSM57で、マイクの向きはコーンエッジ、距離は4インチのものです。
左右のギターでは、マイクはSM57で、マイクの向きはコーン、距離は6インチです。 どちらも、サンプリング周波数は96kHzのものです。
ちなみにですが、SM57というマイクは、レコーディングスタジオではどうだか知りませんが、ライブハウスやコンサートでは、楽器用のマイクの定番です。
IRファイルのファイル名は、マイクの機種やマイクの位置を表しています。
Capは、スピーカーの中心部分で、CapEdgeは、キャップの縁、
Coneはスピーカーの振動板、ConeEdgeは、コーンの外側の縁。
OffAxisは、角度をつけて、マイクを斜めからスピーカーに向けているという意味で、1inや、2inは、スピーカーとマイクの距離で、、1インチとか2インチとかの意味。
センターで鳴っているギターのみ、アンプだけでは歪が足りなかったので、TS-999というオーバードライブペダルを、JCM800の前に刺しました。
その他にもVSTは、ノイズゲート、イコライザー、リバーブも使いました。
ノイズゲートは、Reaper付属のReaGateですが、使用したSFZファイルではノイズがほとんど無いので、これは必要ありませんでした。
ギターを自分で弾く場合は、ノイズゲートは歪み系のエフェクトやギターアンプよりも先に、エフェクトチェインの一番最初に刺すといいと思います。
設定は、ギター用のプリセットを選んでからスレッショルドを調節します。 スレッショルドは、弱い音は消えないが、ノイズは消えるように設定します。その他のパラメーターは、デフォルトのママです。
イコライザーは、Reaper付属のJSで、RBJ 4-Band Semi-Parametric EQ v2というのを使いました。あまりバンド数が多くても扱いにくいので、今の自分には、このくらいが使いやすいです。
Reaperには、もっとシンプルな3バンドのイコライザーのJSや、もっと高機能なイコライザーのVSTも付属しています。ネットを探せば、その他のイコライザーも見つかります。
イコライザーに限らず、VSTは、シンプルなものから始めて、慣れたり物足りなくなったら、別のものに乗り換えるのもいいと思います。 いくら性能が良くても、使いこなせなければ意味がないですし、楽に使えたほうが、音楽に集中出来ます。
ギターのイコライジングについては、いろいろ説明しているホームページがあり、それらを参考にしています。 ただ、やりすぎには注意が必要です。 ギターメインの曲ならば、ギターの音がかっこいいことが大前提です。 音圧を上げるためだとか、他の楽器にかぶらないためだとかで、イコライジングをやりすぎて、ギターの音色がしょぼくなってしまったら、本末転倒です。
リバーブは、Mo VerbというVSTを、センドで使いました。 センドは、「はじめてのReaper」の中でもかきましたね。リバーブのトラックを作って、そこへ別のトラックから音を送るやり方です。
必要ならば、Mo Verbで検索すると、ダウンロード先や、いろいろな説明が書かれているページが見つかるはずです。 プリセットが多く、とりあえず使いやすいです。細かく調節しようと思ったら、パラメーターは分かりにくい気がします。 今回は、Send - Natural Hallというプリセットを使い、パラメーターはいじらずに、各トラックからのセンド量を調節しただけです。
今回は使いませんでしたが、ギターアンプの前に、コンプレッサーのvstを刺してもいいです。コーラスやディレイを使う場合は、普通は、アンプよりも後にインサートするか、リバーブのようにセンドで使います。 自分の場合は、実際のギターや、ギター用のエフェクターの感覚で音を作るので、リバーブ以外はインサートで使うことが多いです。
VSTのパラメーターは、アンプやドライブペダルのドライブの量を調節して、JSのイコライザで音色をちょっと変えた程度で、たいしたことはしていません。
ギターアンプのVSTには、マニアックなパラメータを持っているものも多いですが、効果がよくわからないパラメーターは無視して構わないと思います。 このJCM800のVSTでも、真空管の 12ax7が、Fresh(新品)か、Aged(古い)か選べます。Agedが、使い込んでくたびれた状態とか、ビンテージとか、どういうニュアンスなのか分かりませんが、自分ごときの腕前では、そこにこだわるよりは、先にやるべきことがあるような気がします。
ギターアンプ独特のパラメーターとしては、ゲインや、ドライブといったパラメーターで、歪の量を調節します。
プレゼンスは、トレブルよりも上の高域を調節します。
コンターは、中域を調整しますが、単純に増やしたり減らしたりするのではなく、音の太さとかニュアンスを変える、ちょっと分かりにくいパラメーターです。
ギターアンプのトーンコントロールは、電気回路としては、歪よりも前にあることが多いです。その場合、深く歪ませると、トーンコントロールの効きは悪くなります。
ギター以外の楽器は、ドラムは、SuperDrumFX、ベースは、Ample Bass P Lite IIというVSTを使いました。この2つはお気に入りで、他の曲でもよく使っています。
ベースのトラックでは、コンプレッサー、ベースアンプ、イコライザーのVSTを使っています。 ベースアンプは、Ignite Ampsのもので、コンプレッサーとイコライザーは、Reaper付属のものです。
ドラムは、パラアウトして、コンプレッサー、イコライザー、リバーブなどを使っています。
マスタートラックには、W1 LimiterというVSTを刺しています。 これは、とてもシンプルなリミッターです。
ギターは、完コピには程遠いですが、それなりに雰囲気が出てるんじゃないでしょうか?ドラムやベースも、まあまあかとは思いますが、コンプレッサーやイコライザーなどの使い方は、まだまだ初心者と大差ないレベルです。
ですから、僕のやっている事や、ここに書いている事は、お手本ではなくて、参考にしてくださいね。
もう一曲、こちらはギターパートだけで、以前に作った、Tearsという曲のギターソロに、少しだけ手を加えたものです。
紹介する順番とは逆で、こちらの方が、先に作っています。
バッキングのギターは上に書いたのと同じサウンドフォントです。使用したサウンドフォントでは、ベロシティが57以下で、ブリッジミュートの音になります。
ソロのギターは、こちらのサウンドフォントを使いました。
リンク先は、閉鎖したサイトのアーカイブです。これも、いつまでダウンロード出来るか分かりません。
このサウンドフォントは、Sforzandよりも、SFZプレーヤーを使ったほうがいいです。 自分は、根気が足りなくてあまり使いこなせていませんが、このサウンドフォントは、もっと手間をかければ、ベロシティーやレゾナンスをコントロールして、ピッキングニュアンスもある程度出せるかも知れません。
ギターソロのアンプは、Ignite AmpsのEmissaryです。クリーンとドライブの2チャンネルのアンプで、マーシャルのJCM800よりも、ハイゲインでドンシャリ系ですね。ブギーのレクチのVSTでも、同じような音は作れますし、LePouやNick Crow LabのVSTも、この手の音は得意そうです。
SFZプレーヤーからの音量が足りなかったので、アンプの前にコンプレッサーとイコライザーを刺して、ブースターのように使っています。
スピーカーキャビネットは、Red Wire Impulse ResponsesのブギーのIRファイルを使いました。 このスピーカーキャビネットのマニュアルには、SM57で、エッジから1インチ、プレゼンスは3、NO-TSが標準なので、まずそれをためしてみろとか書いてありました。
バッキングは、左がLePouのLeCto。これは、ブギーのレクチで、クリーンと、控えめなドライブと、ハードなドライブの3チャンネルのアンプです。チャンネルを切り替えないと、ドライブを上げてもあまり歪まなかったりします。 スピーカーキャビネットは、ソロで使ったのと同じです。
右は先の曲で使ったのと同じ、JCM800と、マーシャルのスピーカーキャビネットで、こちらのアンプのゲインは最大です。
VSTは他にイコライザーと、中央のギターではディレイを、マスタートラックで先に書いたのと同じリミッターを使っています。
リバーブは、OmniVerbというのを使いました。このリバーブは、プリセットは少ないです。リバーブのパラメーターは分かりにくいですが、このリバーブのパラメーターは、まだ分かりやすい方だと思います。 プリセットのままで使うならば、Mo Verbの方がお勧めです。
さらに、同じ曲で、ギターアンプのVSTを、簡単に使えそうな物に刺し替えてみました。ギターアンプのVSTを差し替えただけで、その他のVSTは、変更も調節もまったくしていません。
今回はサウンドフォントを使っていますが、自分で弾いたギターの音でも、こんなふうに跡からギターアンプを変更して、音色を変えることが出来ます。これも、VSTの面白いところですね。
使用したギターアンプは、左が、Juicy77で、右が、Blue Cat AudioのBC Free Amp、そしてセンターは、SimulAnalog Guitar SuiteのJCM900です。 このページで今まで使ってきたのと違って、これらは、どれも、アンプとスピーカーが一体になったVSTなので、これらのほうが使いやすいです。
この中だと、Juicy77が良さげです。VSTを刺しただけでもそれなりに使える音だし、スピーカーキャビネットのパラメーターもあるので、音のバリエーションの幅もありそうです。
JCM900は、歪はこの音しか出せませんといった潔い感じですが、クリーンとドライブの2チャンネルありますし、スプリングリバーブも付いています。
BC Free Ampは、ほぼ初めて使ったようなもので、まだ評価は出来ません。第一印象は「なんか違う。」でしたが、ネットのデモ演奏を聞くと悪くないので、ちゃんと設定してやれば、印象が変わるかも知れません。
さらに、いまいち気に入らなかった右のアンプを変更して、アンプの前にドライブペダルのVSTを刺してみました。
今回の変更点は以下の通りです。
・右のギターのアンプを、Blue Cat's Free Ampから、Voxengo Boogexに変更。
・左右のギターは、アンプの前に、Greed SmasherというブギーのオーバードライブのVSTを追加。
・センターのギターには、アンプの前に、R47というRAT(ディストーション)のVSTを追加。
すでに刺してあるアンプや、その他のVSTのパラメーターは、変更していません。追加したVSTの設定は、本当にいい加減です。
歪みの量が増えて、力強くなったような、ただ音が大きくなっただけのような、あんまり分かりやすい見本にはならなかったですね。
と言った感じで、エレキギター関連のサウンドフォントとVSTをいろいろ使ってみました。
こんなふうにいろいろ試しながら、実際のアンプやエフェクターと同じように、気に入ったvstや、気に入ったセッティングが見つけられれば、気に入った音が出せるようになるはずです。
エレキギターのサウンドフォントは、歪ませて使うなら、今回使った2種類が良いと思います。
他には、例えばこちらから、ギター以外にもいろいろなサウンドフォントが入手出来ます。
ここのサウンドフォントは、特殊な形式で圧縮されています。拡張子で検索すると、解答方法が分かると思います。
特にお勧めのものは無いですが、トップページで聞けるTearsで使った、アコギの6弦と12弦は、ここで入手しました。
Tearsのフルートもサウンドフォントです。これは、こちらで入手しました。 他にクラシック系の音がいろいろあり、クオリティーも高そうです。
それ以外で、このホームページで公開している曲では、ダイナマイトキッドのベースが、Sonic Implants Rock Bassというサウンドフォントです。ピック弾きらしい、硬めのはっきりした音色です。
話をギターに戻しまして、ギターアンプは、クリーンとハイゲインは、Emissaryかレクチを使い、その中間のオーバードライブは、JCM800を使うと良い気がしています。 (まあ、気がしているだけなので、気が変わるかもですが……。)
IRファイルは難しいとか、そこまでギターの音に拘りはないという場合は、Juicy77や、JCM900などを使うのもいいと思います。あるいは、FA3のように、プリセットが豊富なVSTを使うのもいいでしょう。
IRファイルを使うと、リアルな音が作りやすいかと思いますし、音色のバリエーションは増えます。ただ、一概にIRファイルを使ったほうが、優れた音になるという事でも無いと思います。 それは、自分の耳で判断しましょう。
JCM900は、最初の頃よく使っていました。トップページにある曲では、てのひら、いつか坂の上で、ラスト・コンチェルトの後半などで使っています。
今回は、サウンドフォントを使いましたが、自分でギターを弾く場合も、ここに書いたVSTが使えます。 その場合は、SforzandやSFZプレーヤーは使わずに、ギターをオーディオインターフェイスに繋いで、録音するだけです。 もしも、これからオーディオインターフェイスを買って、エレキギターを録音しようと思っている人がいたら、入力インピーダンスとか、レイテンシーには注意してください。DTM用のオーディオインターフェイスを買えば間違いないと思いますが、よく分からなければ、調べるなり、楽器屋さんで相談するなりしてください。
もし他に知りたいことなどあれば、メールでもください。分かる範囲でお答えします。